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歯科矯正治療における咬合、機能的アプライアンス、抜歯/非抜歯の考察

2026年4月11日 開催

歯科矯正 咬合 機能的アプライアンス 抜歯・非抜歯 症例検討
135
録音時間
5
参加者
3
トピック数

本講義では、歯科矯正治療におけるセントリックリレーション(CR)バイトの重要性、機能的アプライアンスを用いた早期治療の有効性、そして矯正治療における抜歯・非抜歯の歴史的変遷と現代的選択基準について、専門家が詳細な解説と症例提示を行った。

講師A 講師B 参加者 司会者 Dr. Kwan

CRバイトと咬合の記録

講師Aより、CRCOシフト患者への対応として、セントリックリレーション(CR)でのバイト採得の重要性が説明された。

  • CRバイトの取り方:
    1. 術者が下顎を誘導し、CRを確認。
    2. 患者はリラックスし、顎の筋肉を使わない状態を保つ。
    3. アシスタントが口腔内スキャン(バイトスキャン)を実施。
    4. 奥歯は接触せず、前歯部のみ接触する「後方オープン」の状態を確認する。
  • 治療への影響: CRでバイトを採得することで、前歯の干渉が排除され、下顎の自然な閉鎖が促進される。これにより、治療後の不必要な歯の挺出を防ぐことができる。
  • CRバイトスキャンが必要なケース: 大きな顎位シフトがある患者にはCRスキャンを推奨。シフトが小さい場合はセントリックオクルージョン(CO)スキャンで対応可能。

質疑応答:CRバイトに関する補足

  • 参加者からの質問: シリコンバイト印象ではなく、スキャンを使用するのか?
  • 講師Bの回答: はい、スキャンで行います。
  • 参加者からの質問: CRを重視する患者はどのような人か?
  • 講師Bの回答: 本当にCRを必要とする人、特に大きな顎位のシフトがある患者に行います。小さなシフトの場合はCOで問題ありません。

機能的アプライアンスを用いた治療事例

講師Bより、ファクションマークスアプライアンス(FMA)を用いた治療事例が紹介された。

  • FMAの紹介:「プレオルソ」のようなソフトなアプライアンスで、下顎前歯の唇側傾斜を強力に抑制する効果がある。適切なプロトコルとオーバーコレクションの活用が重要。
  • 症例1: 7歳男児(前歯部クロスバイト・アデノイド)
    • 初期状態: 前歯部クロスバイト、口呼吸、下顎前歯の唇側傾斜、アデノイド肥大、低位舌。
    • 治療経過 (2年半後): 安定した咬合関係を確立。機能的アプライアンスにより、口呼吸や舌位が改善し、アデノイドも自然に縮小した。
  • 症例2: 6歳3ヶ月女児(上顎劣成長・クラスIII傾向)
    • 初期状態: 上顎劣成長に伴うクラスIII傾向、オープンバイト。
    • 治療経過 (10ヶ月後): オーバージェットと上気道(Airway)の改善、上顎歯列弓の拡大。セファロ分析でANBおよび下顎リップの安定を確認。
    • 次のステップ: フェイスマスク治療へ移行し、軟組織機能のさらなる改善、アライナーと骨刺激を促すアクティベーターの併用、アライナー交換サポート装置の活用。
    • 治療結果 (1年後): 上顎歯列弓幅の拡大(28.8mm → 34.9mm)と、下顎歯列弓幅の制御された変化(28.9mm → 27.9mm)、アーチ長の改善。
  • 機能とタイミングの重要性: 矯正治療では、まず機能(Function)、次に犬歯誘導咬合(Canine guidance occlusion)、最後に歯の位置のコントロール(Control of teeth)を考慮する。機能と治療タイミングの適切な組み合わせが良好な咬合誘導に繋がる。

休憩・雑談

  • 通訳からの補足: 質疑応答で触れられた弾性体(エラスティック)のサイズはM6(厚さ6mm)を使用。
  • 講師B: フェイスマスク治療は1年3ヶ月、3級・4級の治療も約1年を要する。
  • 参加者: 日本の先生方の治療も素晴らしいと感じた、との感想があった。

Dr. Hao Kim Kwan氏の紹介

司会者が、本日最後の演者であるDr. Hao Kim Kwan氏を紹介。Kwan先生は中国とマレーシアの計4大学で非常勤教授を務め、多くの歯科および矯正歯科学会の会長や理事を歴任してきた功績が紹介された。患者だけでなく、歯科コミュニティ全体への多大な貢献が強調された。

抜歯 vs 非抜歯の論争:歴史と現代の視点

Dr. Kwanより、矯正治療における抜歯・非抜歯の200年にわたる論争について講演が行われた。

  • 所属機関紹介: Interior Dental Specialist Centerはスペシャリストチームとして運営され、「家族のような絆」を重視。大学のようなトレーニング体制で、全ドクターに論文発表や臨床研究を義務付け、専門医レベルの治療を提供している。
  • 抜歯/非抜歯論争の歴史:
    • Edward Angle (約200年前): 「抜歯すべきではない。神が与えし完璧な歯列を尊重せよ」という哲学が50年間支配的であった。
    • Charles Tweed (50年後): Angleの哲学では解決できない多くの症例があることを発見し、抜歯の必要性を提唱。
  • 現代のパラダイム: 抜歯か非抜歯かは、「何が最も重要か」によって決定される。患者の問題を正確に理解し、診断することが不可欠。主に3つの「P」(Patient: 患者、Periodontics: 歯周組織、Profile: 顔貌)を考慮する必要がある。
  • 抜歯の利点と非抜歯の利点:
    • 抜歯: 適切な咬合、歯槽骨の安定、顔貌の改善に寄与。
    • 非抜歯: 歯の保存、歯列弓の拡大を可能にする。
  • 機能の重要性: 呼吸、舌位、口唇閉鎖など、口腔周囲の機能が歯列弓の発展に大きく影響。特に鼻腔気流の確保と口呼吸の防止が重要。
  • ケーススタディ:機能的な問題への介入:
    • 症例1: 7歳男児。 上顎の劣成長、口呼吸、開口に対し、機能的アプライアンスとフェイスマスクで治療。上気道の拡大と機能改善、良好な咬合を獲得。
    • 症例2: 3歳女児。 上顎劣成長に対し、機能的アプライアンス(プレオルソ)とフェイスマスク、アライナーとアクティベーターの併用で上顎歯列弓の拡大を達成。
  • 抜歯と非抜歯の選択基準: スペース不足、顔貌への影響(Eライン、鼻唇角、オトガイ唇溝)、歯周組織の状態を総合的に評価。
  • 診断と治療計画の重要性: セファロ分析、パノラマX線、口腔内写真、機能診断など、様々な情報を統合的に評価し、患者個々に合わせた最適なアプローチを選択することが良好な治療結果と安定性に繋がる。
  • 現代の矯正治療の課題: アライナー矯正の限界と可能性の理解、骨刺激(Bone stimulation)の活用による治療効果向上、治療期間の短縮と長期的な安定性の両立。アライナー装着補助器具の入手可能性にも言及された。

質疑応答:Dr. Kwanへの質問

  • 参加者からの質問: フェイスマスク治療期間とゴムのサイズ(M6、6mm厚)の意味について。
  • Dr. Kwanの回答: M6は弾性体(エラスティック)のサイズを指し、6mm厚のものを使用する。

まとめ

Dr. Kwanは、抜歯と非抜歯の選択は、単一の基準ではなく、患者の機能、骨格、歯周組織の状態、顔貌など、多角的な視点から総合的に決定されるべきであると結論付けた。各症例に対し、個別化された診断と治療計画を立てることが不可欠であると強調された。

決定事項なし

アクションアイテムなし

抜歯すべきではない。神が与えし完璧な歯列を尊重せよ
— Edward Angle
機能と治療のタイミングを適切に組み合わせることで、良好な咬合誘導が可能となる。
— 講師B
抜歯と非抜歯の選択は、単一の基準ではなく、患者の機能、骨格、歯周組織の状態、顔貌など、多角的な視点から総合的に決定されるべきである。
— Dr. Kwan